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 さまざまな組織や臓器になる万能細胞「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」で、実用化への課題だったがん化防止に、米ハーバード大研究員の八巻真理子・松本歯科大講師(幹細胞生物学)らがマウス実験で成功した。骨や皮膚に含まれるたんぱく質「コラーゲン」を使った。人工多能性幹細胞(iPS細胞)への適用も可能とみられ、再生医療実現に新たな道を開くと注目されそうだ。1日付の日本再生医療学会誌で発表する。

 ES細胞やiPS細胞は、分化する過程で「テラトーマ」という腫瘍(しゅよう)を作ることがある。このため、ES細胞やiPS細胞を特定の組織や臓器にして患者に移植する場合、がん化させない手法の開発が重要になっている。

 研究チームは、ES細胞から立体的な細胞や臓器を作るのに使われる牛のコラーゲン製の人工素材で実験を重ねた。素材は無数の小さな穴が開いたスポンジ状構造をしている。

 その結果、マウスのES細胞を増殖させた人工素材49個をマウスの腎臓に移植すると、約3カ月後までにがん化したのは2例だったが、ES細胞のみを移植した15例では100%がん化した。また、神経細胞になったES細胞で試しても、人工素材を使った場合は全くがん化しなかったが、使わないと6割以上でがんができた。高効率でがん化を抑えたのは初めてという。

 抑制できた仕組みは未解明だが、皮膚や骨に多い1型という種類のコラーゲンで効果を発揮した。八巻講師は「このタイプのコラーゲンがES細胞と結合する際に何らかの腫瘍化抑制機能が働くのではないか」と話す。【奥野敦史】

 ◇分化に向いた素材

 久保木芳徳・北海道大名誉教授(生化学)の話 細胞は種類に応じて分化と増殖に適した環境がある。「居心地のいい家」がないと腫瘍化などの異常が起きる。今回の人工素材は適切な分化に向いていたのだろう。腫瘍化対策の重要性は高まっており、画期的だ。
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